最近注目されているAIエンジニアは、一般的に「忙しい」「激務」などと言われています。これは噂だけではなく、実際に働いてる人の様子を見てもうかがえるものです。
では、なぜAIエンジニアは激務だと言われるのでしょうか。その理由についてご説明をして、他のエンジニアと比較して激務であるのかどうかをご紹介します。また、AIエンジニアの具体的な激務度合いについてもご紹介します。
AIエンジニアが激務になりやすい5つの理由
AIエンジニアが激務だと言われるのには理由があります。
職場環境が悪いことによってAIエンジニアが激務になっているわけではありません。
具体的にAIエンジニアが激務になりやすいと言われている理由は以下の3つです。
- AIエンジニア数の不足
- 技術の進化が早くスキルアップに時間を要す
- プログラマとアナリストでスキルが異なる
- 業務範囲が多岐にわたるため
- クライアントワークの納期がハード
これらの理由について以下では具体的にご説明をします。
AIエンジニア数の不足
AIエンジニアの絶対数が不足していることで激務になっています。仕事内容がうまく分散できず、偏ってしまうことで激務になるのです。
最近は様々な分野でAIが注目されています。そのためAIを取り扱うAIエンジニアも多くの人がいると考えるかもしれません。しかし、AIは急激に需要が高まった分野です。この急激な需要に対応できず、AIエンジニアが不足している状況です。どんどんエンジニアの人数は増えていますが、それでもまだ需要とのバランスは取れていません。
これからもAIエンジニアの人数は増えていくと考えられます。ただ、それと同時にAIを求める企業も増えAIエンジニアの需要もさらに高まるでしょう。つまり、負荷分散はまだまだ難しい状況です。需要に対してAIエンジニアの絶対数が不足する状態が続くことで、負荷のかかる激務の状態となっているのです。
技術の進化が早くスキルアップに時間を要す
AI業界は技術の進化が早く、スキルアップに時間を要することでも激務になっています。次々と新しい技術が生まれますので、それを習得するために負荷がかかってしまいます。
AIエンジニアがとにかくスキルアップするだけであれば負荷は下がるかもしれません。朝から晩までスキルアップに時間を割けるとすると、新しいスキルもスムーズに習得できることでしょう。
しかし、実際にはAIエンジニアとして働きながらスキルアップしなければなりません。朝から夕方はAIエンジニアの業務をこなし、残りの時間でスキルアップをしなければならないのです。このスキルアップが負荷のかかることであるのは想像に難くないでしょう。いわば残業時間でスキルアップをしなければならない状況なのです。
スキルアップしなければならない量と実際の勤務とのバランスが取れないことで激務となります。スキルアップはやむを得ないことですので、こちらも計画的に進めることが理想的です。
プログラマとアナリストでスキルが異なる
絶対数が少ないAIエンジニアの中でも、役割が2つに分割されていることで激務となっています。
AIエンジニアには大きく分けてプログラマとアナリストがいます。
簡単に説明をするとプログラマはAIの実装や開発をするエンジニアです。プログラミングをしてAIを作り上げるとイメージすると良いでしょう。
それに対してアナリストはデータを集計したり可視化したりしてインサイトを施策に結びつけることが主な役割です。場合によっては適切なデータを読み出すために、プログラマと連携をしながらAIのカスタマイズをします。
同じAIエンジニアではありますが、担当する領域が大きく異なります。AIエンジニアであってもアナリストであればプログラミングはできなくても良い可能性すらあるのです。
AIエンジニアが10人居たとしても5人しかプログラマがいなければ、プログラミング作業はこの5人で担当しなければなりません。領域が細分化されることで、それぞれの担当者により負荷がかかりやすく激務になるのです。
業務範囲が多岐にわたるため
AIエンジニアは、機械学習モデルの開発やデータの前処理、モデルの評価・改善、システムの開発・運用など多岐にわたる業務を担当することが多いです。
AIによる分析や予測には大量のデータが必要ですが、欠損値や異常値が含まれていたりデータの形式が統一されていなかったりするケースも少なくありません。
そういった問題解決やデータの整備、システムの設計やインフラの構築、障害対応に追われ、業務負荷が高くなり激務になる傾向があります。
クライアントワークの納期がハード
AIエンジニアは、クライアントからの要望やニーズに合わせたカスタマイズが求められることがあります。
開発中にクライアントからの要望が追加された場合には、その要望に対応するための修正や改善も必要になります。
こういった作業には多くの時間がかかり、設定された納期内に作業を終わらせることが難しいケースは少なくありません。
そのため、納期に間に合わせるために激務になる場合があります。
激務の中で起こるAIエンジニアの悩みは?
AIエンジニアは激務が続く中で悩みが出てくる場合があります。
では、どのような悩みがあるのか見ていきましょう。
高度なスキルを求められる
AIエンジニアは、AIモデルの構築や改善、データの前処理やモデルの学習などの高度なスキルが必要です。
こういった高度なスキルを習得するだけでなく、AIエンジニアにはAIの理論だけでなく、ビジネスや業界の知識も必要です。
また、AIエンジニアはクライアントと協力してプロジェクトを進めることが多いです。
クライアントが要求するニーズや要件を正確に把握し、適切なAIソリューションを提供するための良好なコミュニケーション能力も重要なポイントになります。
これらの要素が組み合わさり、AIエンジニアが高度なスキルを求められるという悩みが生じることがあります。
激務でも勉強が必要になる
AIエンジニアは、急速に発展するAI技術の進歩に追いつくために常に最新の知識とスキルを学び続ける必要があります。
そのため、AIエンジニアは常に勉強を続け自己学習を行うことが求められます。
しかし、激務の中で勉強する時間を確保することは難しく、仕事に追われているうちに勉強する時間がなくなり新しい技術や知識を習得することができなくなる可能性があります。
AI技術は急速に進化するため、学んだことがすぐに陳腐化してしまいます。
常に最新の情報に対応するためには、常に最新の情報をキャッチアップし、継続的な学習が必要なため時間の確保とモチベーションの維持に悩むことがあるでしょう。
将来性が不明瞭
AIエンジニアは新しい技術が生み出されるたびに、AIエンジニアたちは常に新しい知識とスキルを身につける必要があります。
AIだけで対応できることも増えていることから、将来的にこの分野での仕事が減ってしまう可能性があるという心配をする方も少なくありません。
しかし、AI技術の進化は急速に進んでいることからますます多くの業界で活用され、AIエンジニアの需要は今後も増えていくと予想されます。
健康面の不安
AIエンジニアは、長時間のコンピュータ作業やプログラミング作業を行う必要があります。
また、納期に追われたり様々なプロジェクトに参加することが多いため、過剰なストレスを抱えることがあります。
これらの状況から健康面の不安を引き起こす原因となることがあります。
長時間のコンピュータ作業やプログラミング作業は、過剰な目の疲れや頭痛、腰痛、手首の痛みなどを引き起こすことがあります。
また、長時間座っていることによって、肥満や心臓病、糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクが高まることが報告されています。
こういった激務の中で起こる健康面の悩みが多くなります。
AIエンジニアは他のエンジニア(SE)よりも激務なのか
一般的にエンジニア(SE)は激務だと言われています。それらと比較してAIエンジニアは激務なのでしょうか。他のエンジニアとの比較についてご説明をしていきます。
エンジニア(SE)はそもそも激務になりやすい業界である
そもそも論ではありますが、エンジニア(SE)は激務になりやすい業界と言われています。このことは皆さんも見聞きしたことがあるでしょう。実際にエンジニアとして働く現場の声を聞いても、激務であるとの回答を得ることは多々あります。
AIエンジニアも例外ではなく、他のエンジニアと同様に激務になる可能性があります。もちろん仕事量に波はあると考えられますが、エンジニア全体で考えると激務であるものです。AIエンジニアだけが激務になるというわけではありません。
働き方改革が注目されていますので、エンジニア全体の負荷を下げようとする動きはあります。ただ、まだまだエンジニアは激務であり、AIエンジニアもその例外ではありません。
エンジニアの中でもAIエンジニアがより激務になりやすい理由とは
エンジニアは全般的に激務になりやすいことをご説明しました。働き方では皆さんのイメージ通りであるかもしれません。負荷のかかりやすい職業の一つです。その中でもAIエンジニアはより激務になりやすいのです。
その大きな理由はAIエンジニアの数が不足しているということです。AIエンジニアは一人ひとりに負荷がかかりやすい状況が続いています。そのため、他のエンジニアと比較するとAIエンジニアは激務になりやすいのです。
ただ、AIエンジニアになると必ず激務というわけではありません。上記でもご説明したとおり、仕事には波があります。また、企業によってAIエンジニアの人数は異なっています。絶対数としては不足しているものの、AIエンジニアを多く抱える企業であれば負荷は軽減できるものです。
絶対数が不足していることでAIエンジニアは激務になりやすい状況です。エンジニア全体でも負荷がかかりやすいと意識しておいた方が良いでしょう。
具体的なAIエンジニアの激務度合い
具体的にはAIエンジニアとして働いた場合、どの程度の負荷が見込まれるでしょうか。ここではITコンサルタントとしてAI導入を経験してきた筆者が実際に見たAIエンジニアの働き方をご紹介します。
平均残業時間
AIエンジニアの平均残業時間は30時間から80時間ほどです。80時間は労働基準法の上限値ですので、非常に忙しいと考えられます。ただ、30時間の残業時間であれば、エンジニア平均と大きな差はない値です。
作業時間が長くなるのはAIエンジニアの中でもプログラマです。開発作業ですのでどうしてもバグなどで時間を取られてしまうことがあります。納期も迫ってきますので、残業してカバーしている現状があります。
それに対してアナリストやコンサルタントは残業時間が短い傾向にあります。それでも30時間弱ですが、AIエンジニアの中では短いと考えてよいでしょう。
アナリストやコンサルタントの残業時間が短いのは、プログラマのように予期せぬ出来事が起こりにくいからです。残業してまでカバーしなければならない事象が起こりにくいことで、残業時間が短くなっています。
休日労働時間
AIエンジニアは激務だと言われていますが、休日出勤に関しては特段多いものではありません。発生する場合であっても月間1-2回です。完全に土日がつぶれるような働き方ではありません。
休日出勤しなければならないのは、締め切りの都合などでやむを得ない時に限られています。つまりAIエンジニアの中でもプログラマが出勤していることが多いのです。ただ、締切に追われている状態では休日労働しなければならないこともあります。AIエンジニアだけが過酷というわけではありません。
年休取得数
年休は計画的であれば自由に取得できる状況が多いようです。職場内で相談をしておくことで年休の取得が可能です。
もちろん本番リリース前など年休を取得してしまうと業務がうまく回らない時もあります。このような時は取得できないことも考えられます。これはもはやエンジニアに限らず、社会人であれば該当する可能性があることです。職場に迷惑をかけない状況で年休は取得しなければなりません。
タイミングさえ選べばAIエンジニアも年休の取得が可能です。激務の中でもライフワークバランスは意外と取れるようになっています。
激務を解消する方法は?
AIエンジニアとして長期的に活躍するためにも、激務を解消する必要があります。
ここからは、激務を解消すべき3つの対処法を解説いたします。
1日で稼働可能な仕事量を把握する
AIエンジニアにとって、激務を解消するための重要な方法の一つは1日で稼働可能な仕事量を把握することです。
仕事量を正確に把握することで、自分が一日にどの程度の仕事量をこなせるかを理解し優先順位をつけるようにしましょう。
休憩時間や移動時間なども含めて1日にどの程度の時間があるかを考え、どれだけの時間をAIエンジニアとしての作業に割けるかを把握しましょう。
ある程度の経験があれば、作業量や作業時間の見積もりがしやすくなります。
このように、自分の仕事量をコントロールして激務を解消するように努めましょう。
上司や同僚に相談する
激務を解消するための対処法に、上司や同僚に相談するという方法があります。
自分が抱えている問題や悩みを共有することで、上司や同僚は自分の経験や知識を活かして解決策やアドバイスを貰うようにしましょう。
また、周囲の人たちが激務であることを把握することで心理的な負担を軽減することができます。
信頼できる上司や先輩、仲の良い同僚などに相談することで、自分のやり方や考え方に偏りがあったり改善すべき点があることに気づくことができる可能性があるのもメリットでしょう。
転職を視野に入れる
AIエンジニアが激務に悩まされている場合、転職を視野に入れることも一つの解決策となります。
転職することで、自分にとってより働きやすい環境やより適した仕事内容を見つけることができる可能性があります。
AIエンジニアとしての実績がある場合は、自分自身をヘッドハンティングに登録することで、優良企業からスカウトされることもあるでしょう。
また、コミュニティ活動やイベントに参加することで同じ業界の人と仲良くなり会社を紹介してくれることもあります。
もし長期的にAIエンジニアとして活躍したいのであれば、環境を変えてみるのも良いでしょう。
まとめ
AIエンジニアは一般的に激務の状態が続いています。これは絶対数が不足していることで、一人ひとりに負荷がかかりやすいからです。多くの需要に対して少ないエンジニアで対応しているため激務となります。
ただ、激務だからといってライフワークバランスが崩壊するわけではありません。確かに激務で残業時間は長いものの、エンジニアである以上は仕事量に波はあります。落ち着いている状態であればAIエンジニアであっても大きな負荷はかかりません。
また、休日出勤は少なく年休の取得もできることが大半です。激務でありひたすら働かなければならない職業ではありません。多少辛い時もある職業ではありますが、体を壊すほど激務というわけではないのです。
AIエンジニアの基本的な情報や身に付けるべきスキルは、以下の記事で詳しく解説しています。
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