“ーーAIが人の仕事を奪うーー”このフレーズが頻繁に使われるようになってから、早くも数年が経とうとしている。すでにビジネスの現場では多くのAIが導入され、日々進化を遂げている。“AIが人の仕事奪う”ということが、あながち嘘でなくなっている状況だ。しかし、ちょっと立ち止まって考えて欲しい。AIは人から仕事を奪うだけなのだろうか?むしろAIが「新たな仕事」を生み出しているという側面もあるんじゃないだろうか。
今回はそのうちの1つである「AIコンサルタント」を特集する。豊富な知見と経験を持つ、人気連載「マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(ITmedia)」を執筆されているマスク・ド・アナライズさんにお話を伺った。
最初は「分☆析太郎」?知られざるマスク・ド・アナライズの素顔
ーーはじめまして。本日はよろしくお願いします。登場からマスクをかぶってらっしゃるんですね。
基本的に表に出る時はマスク姿で行動していますね。警備員に止められたのは六本木ヒルズくらいですね……。経産省は入り口で取材だと説明したら大丈夫でした。
ーーそれは意外ですね。お堅い雰囲気があるのに…。
警備員も「色んな人がいますからね」で通してくれました。呼び方はなんでもいいですよ。マスクドさんでも、マスクドアナライズでも。好きな呼び方で呼んでください。
ーーではマスクドさんとお呼びします。では最初に、マスクドさんのことについて教えてください。
もともとAIベンチャーで働いていたときにTwitterを始めたのですが、いろいろあって会社の名前や顔を出せなかったんです。じゃあどうしようかと思いついたのが、この「マスク」でした。
名前も最初はいろいろ考えていて「マスク・ド・アナライズ」ではなく、漫画家の漫☆画太郎先生から「分☆析太郎」とか、「ミスター・ディープラーニング」とか、「通掛分析(とおりがかりぶんせき)さん」とか考えてました。もともとプロレスが好きだったのもあって、今の名前になりました。
ーーAI関連のイベントや記事の執筆など幅広い活動をされていますよね。最初はどのような活動から始まったのですか?
最初はTwitterとnote(ブログサービス)ですね。そうやって情報発信していくうちにITmediaさんから取材の依頼があって、連載が始まったという流れですね。
ーーそれが今や大人気コラムですからね。記事を書く上で意識していることはありますか?
わかりやすくて面白いこと、時事ネタや他の題材に絡める点は意識していますね。そのときどきで流行は変わりますし、他の題材がきっかけになって幅広い人に刺さってくれたらと思っています。掲載ペースとしては月1回くらいですね
ーーマスクドさんと言えば豊富なAI業界の知識ですが、どのように知識をつけられたのですか?
AIベンチャーで働いていたことがきっかけです。職務内容は営業・広報・コンサルタントになりますが、エンジニアの説明を理解して顧客に提案できるように書籍やネット、SNSなどで勉強しました。直接お話を伺うことも勉強になります。今はフリーランスとして働いていますが、仕事の幅が広がったこともあり、様々な業界の知識が身についてきたと思っています。
ーー会社員時代とフリーランスで変わったことはありますか?
自分にすべて裁量があるので、仕事の幅は確実に広がっています。そういう意味ではフリーランスになって働きやすくなりました。ただし、ツイートや発言内容は会社員の時よりも気を使うようになりました。その点の調整は必要ですね。
ーー仕事をする上でこれ以外に気を付けていることはありますか?
責任が全て自分に降りかかってくるので、契約や仕事内容などをコントロールしなくてはならない点ですね。
あと、独立してすぐに仕事があるわけではないと頭に入れておかないといけません。一旦立ち止まってみて、自分に仕事を依頼してくれる企業がどれだけあるのかを考えてみるといいでしょう。独立する前に一定期間の生計を立てられる貯金があった方がいいですね。
「ケチると失敗する」AI導入における失敗の原因とは
ーーマスクドさんは様々な立場から、企業のAI導入を支援されています。マスクドさんから見てAI導入が失敗する会社の共通点はありますか?
ビジネス側のポジションによる回答ですが、断言できるのは予算ですね。予算をケチって一番安い見積もりの会社に依頼すると失敗することが多いです。ただし、必ずしも予算を増やして大きい会社に頼めばうまくいくとも限りません。よって、ベンダーの見極めが重要だと思います。
ーー見極め…。マスクドさんが思う、「良いベンダー」の見極め方はなんですか?
まず言えることは開発・導入実績があるかどうかだと思います。業界自体が発展途上にあるので、実績のある会社は限られます。そこで、信頼できるベンダーを見極める方法としても「紹介」は有効だと考えています。業種業界や開発内容によってベンダーの得意不得意はありますが、他社に紹介できることは目安となるでしょう。
また、重要な点はエンジニアと顧客のブリッジをどう作るかだと思います。特に、エンジニアが分析に集中するための環境づくりが重要です。防波堤となって、エンジニアと顧客のブリッジになる営業担当の力量が重要だと考えています。
AIの実装には業務知識も必要になるので、企業のAI導入においてはエンジニアがどれだけ事業ドメインを理解できるか、顧客もそれを支援できるかが重要です。
そもそも、AI開発は必ず成功するものではありません。どこまで成果が出せるかは実際に取り組んでみないとわかりません。今はAIという言葉がブーム化になって、過度な期待ばかりが高まっています。営業担当は期待値コントロールも重要な仕事になります。
「世の中を良くする”力”」マスク・ド・アナライズが語るAI業界の今後のビジョンとは
ーーAI業界全体のこれからについてはマスクドさんはどのように見ていますか?
トレンドの肌感としては、タピオカと同じだと思っています。いろんな会社が参入してきて、競争過多の状態に陥っています。
ーー確かに、ここ数年でAI事業を立ち上げる企業がかなり増えている印象がありますね。最後に、マスクドさんご自身の今後のビジョンを聞かせてください。
まずは家賃が払えるくらいの収入を稼ぎたいですね。
冗談はさておき、データ活用は普遍的な課題だと考えています。AIを含むIT技術は世の中を良くする力だと信じているので、今後もITを軸にして仕事をしたいです。
その中で私ができることとして、業務支援や、企業への取材や記事執筆、イベントの企画や登壇などと多岐に渡って支援できると思います。
そういった活動を通して、世の中のIT化・AI化を推進したいと思っています。
AIによって生み出される「新しい仕事」にどう取り組むか
“ーーAIが人の仕事を奪うーー”
確かに、AIはこれまで築き上げてきた仕事を奪う一面もある。しかしその一方で、AIによって生み出される仕事も多くあるのだ。
AIに使われるのか、それともAIを使うのか。その決断に迫られるのは「今」かもしれない。