コンピュータの発達に伴って、AI、機械学習、ディープラーニングという言葉をよく目にするようになりました。テレビでは日常的に特集が組まれ、書店ではこれらに関する本が店頭にずらりと並んでいます。
社会を沸かせている単語ですが、みなさんはこれらの違いが分かりますか?
同じような場面で使われることが多く、混乱している方は多いように思います。
そこで、この記事ではAI、機械学習、ディープラーニングの違いについて解説します。
もっと詳しく学習したい初心者におすすめの本も紹介しますよ!
AI、機械学習、ディープラーニングの違いとは?
AI、機械学習、そしてディープラーニングの違いは、ずばり、対象とする分野の範囲です。
上の図のように、機械学習はAIの一部であり、ディープラーニングは機械学習の一部です。
この関係を念頭に置きながら、それぞれの意味をサクッと解説していきます。
AIとは?
AI(人工知能)は、その名前が示すように、人工的な知能を機械に組み込んだものです。
一般社団法人 人工知能学界成立趣意書では、「大量の知識データに対して、高度な推論を的確に行うことを目指したもの」と定義されています。
簡単に言ってしまえば、「大量のデータをもとにして、専門家のように物事を予測できたり解決できたりするコンピュータ」のことです。そんなAIは、いくつかのブームを経て進化してきました。
第1次ブーム(推論・探索)
コンピュータによる推論や探索が可能となり、1956〜1960年代に初めてAIのブームがやって来ました。
迷路を解いたり、数学の定理を証明したり、ルールに則った問題を自動的に解決する技術が脚光を浴びました。
しかし、様々な要因が絡み合う、複雑な現実社会の問題を解く能力は実現出来ないことが判明しました。ブームは去り、AIは冬の時代を迎えます。
第2次ブーム(知識獲得)
次に、知識を持ったAIのブームが1980年代に起こりました。
様々な情報をコンピュータに与えることで、現実社会で実用可能なAIを作ろうと研究が進められました。
専門分野の知識をコンピュータに取り込ませることで、専門家のように現実社会の問題を解決できるコンピュータを作ろうとしたのです。例えば、患者が申告する症状から病気を推測する医者AIなどです。
しかし、当時のAIには必要な情報を自分から収集する能力がありませんでした。必要な情報は全て、人間が与えなければならなかったのです。問題解決に必要な膨大な情報を、コンピュータに理解できるように記述することにはどうしても限界がありました。こうした限界から、再びAIは冬の時代を迎えます。
第3次ブーム(学習)
そして再び訪れたブームが、現在まで続く自己学習なAIのブームです。ビッグデータと呼ばれる大量のデータを用いることで、自分から必要な知識を学習するAIが実現されました。そのAIの学習に用いる技術が機械学習です。
機械学習とは?
機械学習は、コンピュータに学習能力を与えるための学問分野です。コンピュータに自己学習のアルゴリズムを与えることで、物事を予測するための知識をコンピュータがデータから学習するようにします。これによって、人が大量のデータを分析して物事を予測するのに代わって、コンピュータが自動的に予測してくれるようになったのです。
機械学習には、大きく分けて3つの分野があります。
- 教師あり学習
- 教師なし学習
- 強化学習
教師あり学習
教師あり学習は、ラベルが与えられたデータでコンピュータを学習させ、未知のデータや将来のデータを予測できるようにすることを主な目標にしています。
【例】画像認識
Yes Healthは、写真から食事内容を認識するシステムを開発しています。生活習慣病の治療の際、アドバイサーが患者の食事写真から食事内容を確認することがありますが、写真の中から食事内容を目視で判断しなければなりません。これによって食事内容が自動的に特定されるため、アドバイサーの負担の軽減が期待されています。
AI画像認識で食事内容をモニターして糖尿病を改善するYes Health
教師なし学習
教師なし学習は、先ほどの教師あり学習とは違い、データに与えられたラベルを参照せず、データからパターンを推測します。
その例の一つがクラスタリングです。クラスタリングは、大量の情報を意味のあるグループにまとめる手法です。データを法則化して、データ間の関係性を導き出すことができます。
【例】クラスタリング
住友電工情報システム株式会社は、AIによる文書クラスタリング技術を開発しています。雑多な文書を、それぞれの特徴に基づいて自動的にカテゴライズします。文書を自動的に整理することができるようになると期待されています。
住友電工情報システム、AIによる文書クラスタリングに対応した全文検索ソフト「QuickSolution 11.3」
強化学習
強化学習は、コンピュータが環境対して最適な行動を学習することを目的としています。AIのイメージが一番強いのはこの分野でしょう。囲碁AIやゲームAIなどは、これを基に構築されています。
【例】AlphaGo
AlphaGOは、イギリスのDeepMind社が開発した囲碁AIです。2017年に、人類最強との呼び声が高いプロ棋士・柯潔(カ・ケツ)との対局にて、3戦3勝の成績を収めました。
囲碁は、盤面の評価が難しい上に、考えなければならない盤面のパターンが膨大です。AIにとって、囲碁は最も実現が難しい分野と言われていました。AIにとって最も困難と言われているゲームで世界最強クラスのプロ棋士を破ったので、AlphaGoは注目を浴びたのです。
現在は、より進化を遂げたAI「AlphaZero」が、チェス、将棋、囲碁、それぞれの世界最強AIを討ち破ったと発表されています。
「AlphaZero」がチェス、将棋、囲碁の各世界最強AIを打ち負かす
ディープラーニングとは?
ディープラーニングは機械学習、つまり、AIがデータから学習をする手法の一つです。
人間の神経細胞(ニューロン)の仕組みを模したニューラルネットワークが、ディープラーニングのベースとなっています。かつては、学習にかかる計算コストの高さがネックとなっていました。しかし、計算機性能の向上により、近年注目されるようになったのです。
ディープラーニングの利点の一つは、データの特徴を自動的に学習させられる点です。従来の機械学習では、コンピュータに学習させるデータの特徴的な情報を、人間が用意してあげる必要がありました。花で例えると、花びらの色や数、花の形といった情報です。
しかし、ディープラーニングによる手法では、本来人間が用意しなければならない特徴量さえも機械がデータから学習します。それによって、従来の機械学習による手法とは一線を画すような高い性能を発揮できるようになりました。
AIの勉強をこれから始める初心者におすすめの本(入門書)4冊
AI、機械学習、ディープラーニングの概要は、掴んでいただけたかと思います。
ここから先では、AI、機械学習、ディープラーニンをもう少し詳しく学びたいという方におすすめの入門書を4冊ご紹介していきます。
人工知能は人間を超えるのか
みなさんご存知の通り、AI技術は目覚ましいスピードで発展しています。2045年には、AIが自分の能力を超えるAIを自ら作り出せるようになる、シンギュラリティが起きると言われています。AIを利用していくためには、AIについて正しく認識する必要があります。この本は、そんなAIの歴史や仕組みなど、AIの概要をわかりやすく説明しています。AI初学者の1冊目に、ぜひおすすめの本です。
文系AI人材になる:統計・プログラム知識は不要
AI技術がビジネスに普及していく中、これからの時代は、AIをいかに使いこなしていくかが大事になってきます。そこで重宝されるのが、ビジネス視点でAIを使いこなせる人材です。AI社会になって職を失われるのでは?、文系のワタシがAIでキャリアアップするにはどうしたらいいの?この本では、ビジネス視点でAIを使える文系AI人材になるための方法を紹介しています。
Python機械学習プログラミング
機械学習とプログラミングは切っても切り離せない関係です。いざビジネス現場で機械学習を使うとなった場合、機械学習をどうプログラミングで実装するかが問題となります。そこでおすすめなのがこの本です。Pythonという、機械学習の実装で多く用いられているプログラミング言語を用いて、機械学習をどのようにプログラミングしていけばいいのかを説明しています。本の中にコードがたくさん載せられているので、実際に手を動かしながら、機械学習をプログラミングするスキルを身につけることができます。
ゼロから作るディープラーニング
この本では、主にディープラーニングのプログラミングに焦点を当ています。大注目のディープラーニングをどのように実装していけばいいか、とてもわかりやすく解説しています。手を動かしながらディプラーニングを勉強することで、理論と実践の両方から理解を深めることができます。ディープラーニングに焦点を絞って勉強したいという方に、ぜひおすすめです。