企業の人手不足の解決策として導入が進んでいるAI。
AIを活用するためにも、ただ導入するだけではなく十分な精度が大切となっています。
AIの精度を高めるために、ポイントとなるのが教師データです。この記事では、AIに深く関係する教師データについて詳しく解説いたします。
教師データと学習データの違いや、教師データの作成方法もご紹介するので、AIを導入しようと考えている方はぜひご参考ください。
教師データとは機械学習の一種
教師データとは、簡単に言うと機械学習に利用するデータのことです。
AIに質問と回答を繰り返し学習させることで、パターンとルールを覚えさせます。
学習が進むと学習させていた質問と似たような内容の別の質問に対しての正解も導き出すことができます。
教師データによるAIの学習方法
教師データによるAIの学習方法は、人間が質問に対して回答になるものを次々と学習させていきます。
例えば「若い男性はどれですか?」という質問に対して、20代程度の男性の写真を次々と見せます。すると、どんどん若い男性の顔を覚えていきます。
途中で、若い女性や年配の男性の写真を見せることで「これは若い男性ではありません」といった回答が返ってきます。
このように、AIに質問と回答を繰り返して学習させたデータが教師データです。
教師データと学習データの違い
教師データと同時に学習データという言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
教師データと学習データは違うものではありません。学習データの一種として教師データがあるイメージです。
教師データでは、質問と回答を繰り返し学習させていきますが、学習データは教師ありデータと教師なしデータがあります。
教師学習の場合は、正解となるデータがない状態で学習を繰り返していきます。
機械学習の種類
機械学習の種類は、先ほど解説した教師あり学習のほかに、教師なし学習や強化学習があります。
それぞれ特徴が異なるため、ポイントを抑えておきましょう。
教師あり学習
教師あり学習は、AIに質問と回答を繰り返し学習させて、パターンとルールを学習させることです。
例えば、たくさんの種類の犬の写真をAIに見せて、繰り返し学習させたとします。途中で猫やウサギの写真を見せても間違うことなく判断した場合は、教師あり学習は成功です。
学習が進むと、全く同じ質問の回答だけではなく、似たような質問の回答も可能になります。
画像を繰り返し見せて学習させるうちに、正解ではないデータに対して予想ができるようになるためより柔軟な回答が可能になります。
この教師あり学習では、SNSのDMがスパムかどうかの自動判定やスポーツの勝敗予想などに応用されます。
教師なし学習
教師なし学習は、正解のデータがなく、入力されたデータを利用して正解を学習させていくことです。
教師なし学習では教師データがないため、データそのものが持っている特徴の分析を行います。正解がないことで、与えられたデータの中に見つかる傾向や区分を発見できるのがポイントです。
はっきりした正解がないパターンの特定が得意なことから、頻出パターンの発見やグループ分けに適した方法です。
強化学習
強化学習は、AIシステムが試行錯誤を繰り返して、タスクを実行していくことです。
教師あり学習と同じく、人間が正解を次々と学習させるのではなく、AIが自律的に学ぶことを目指しています。正解を与えなくても最適な行動ができるように学習していきます。
例えば、カーナビの最短距離や将棋AIなどが強化学習の例に挙げられます。この学習方法により、改善しながら学習をしていくことから成長しやすい機械学習といえます。
教師データの作り方
教師データの精度を高めるためには、学習をどんどん繰り返していくことが大切になります。
AIは学習すればするほど精度が上がるので、根気強く学習させましょう。
課題を設定する
教師データの課題を設定する際に、機械学習でどのような課題を解決したいか明確化させておきましょう。
教師データを使って自社の事業の売上を上げたり、商品在庫の仕入れなどが挙げられます。
データを集める
次に、設定した課題を解決するために必要なデータを集めます。
教師データは機械学習に大きな影響を与えることから、データの量と質に注意して集める必要があります。
データの量が足りないと新たなデータを予測することができず、オーバーフィッティングという状態になってしまいます。
教師データの集め方は、次の章で解説いたします。
データにアノテーションを付与する
アノテーションとは、学習させるデータに対して関連情報を付与する作業のことです。
画像データや音声データなどに関連情報を付けていきます。画像データをアノテーションする場合は、物体検出と領域抽出と画像分類の手法を使って行います。
画像から検出した物体や画像から抽出した領域、画像の属性に関連情報を付けていきます。
なお、画像データをアノテーションする場合は、以下3つの手法を使えます。
犬の画像データをアノテーションする場合は、画像から犬を検出して画像にタグを付けていきます。ほとんどは手作業でのアノテーションになるため時間がかかります。
そのため、アノテーション作業をサポートしてくれるツールや代行業者の依頼も有効的です。
教師データの集め方
教師データは、機械学習に大きな影響を与えるためより多くのデータを集めることが大切です。
ここからは、教師データの集め方について解説いたします。
自社でデータを蓄積する
自社のサービス内でデータを蓄積する方法です。
顧客データや売上データ、文書データなど様々なデータを活用して学習させていきます。
例えば、洋服の通販ショップの運営をしている場合、過去の購入情報や購入する価格帯、ヒットしたデザインや人気の色などを学習させることによって、より購入してもらいやすいおすすめ商品を表示させることができます。
また、およその売上予測も可能になることから、在庫などのロスも予防することができるでしょう。
アンケートを利用する
自社のデータだけではなく、顧客以外の声をデータにすることも可能です。
例えば、メールやネット、街頭でのアンケート結果を活用することで、簡単に潜在層のデータを集計することができます。
近年ではSNSでもアンケート投票できる機能が搭載されているため、よりアンケート結果を集めやすい環境が整えられています。
より数を集めたい場合は、有効的な方法を言えます。
データセットを利用する
データセットとは、一定の形式に整えられたデータのことです。
このようなデータを販売している企業から購入したり、教師データの作成代行をしている企業に依頼することによって効率化することができます。
できるだけスピード感をもって作業をしたい場合におすすめです。
動画から画像データを収集する
動画を活用することによって効率よく画像データを収集できます。
動画は、画像が連続したデータの集まりなので、数分の動画から多くの画像データを収集することが可能です。イメージとしてはパラパラ漫画やアニメのようなものですね。
例えば、数匹の犬が遊んでいる動画を画像データにすることで、犬のデータを何万枚も入手することができます。このデータを学習させることによって、より精度の高い学習データを作ることが可能になります。
教師データはどれくらいの量が必要?
教師データはデータが多いほど精度が高まります。
しかし、何枚のデータを学習させればデータの精度が上がるという答えはありません。
プロジェクトの目的や目標とする精度によって変化するため、実際にAIに学習させてみて、課題を解決できれば完成になります。課題が達成できずに足りないようであれば追加で学習を継続しなければいけません。
教師データの質にも注意
教師データの量が多いほど精度が高まりますが、量が多いだけで質が悪いと意味がありません。
教師データは量だけでなく学習させる品質にも大きな影響を与えます。偏りのない素材と安定したアノテーションが揃うことで質がよくなります。
そのため、1つの動画を画像にして学習させるだけではなく、撮影場所や時間帯、色々な種類のものなど偏りがない動画をたくさん用意しなくてはいけません。
また、アノテーション作業をする場合も、同じ判断基準で作業することで偏りのない情報になります。
精度の高い教師データを作るためにも、量と質の両方にこだわりましょう。
AIと教師データを活用する際の注意点
ここまで、教師データの作り方と集め方について解説しましたが、教師データをただやみくもに学習させるのはよくありません。
教師データを活用する際には注意する必要があります。
以下の2点に注意して、安全に効率よく進めましょう。
個人情報や著作権は問題ないか
学習データを集めるにあたって、画像データの個人情報や著作権の取り扱いには注意が必要です。
例えば、SNSから拾ってきた画像や著作権のある画像を使用すると、学習データがそれを学習してしまって著作権や肖像権の侵害に該当するデータが完成してしまうおそれがあります。
特に企業で教師データを作成する場合は、企業の信頼を失う結果につながってしまいます。
教師データに学習させる際には、画像や音声に問題がないかも確認しましょう。
AI人材は確保されているか
AIを活用した運営をする場合、専門の知識を持ったAI人材がいることが必須です。
特に、アノテーションの作業は多くの時間がかかるため、より専門性を持って注意深く取り組む必要があります。
完成した場合は、このデータ量で問題ないか何回もテストをしたり、足りないと判断できる能力も大切です。
教師データを扱える人材が多いと教師データの質と効率にもつながるため、AI人材の確保は大切といえます。
もし、周りにAI人材がいない場合は、アノテーションツールを利用したり教師データの作成代行に依頼するのが良いでしょう。
教師データでAIを活用しよう
教師データを作ることで、よりAIを活用することができます。
AIでできることの幅が広がるので、今後もより多くの企業で取り入れられるでしょう。
ぜひ教師データを作成してAIで効率化を目指してはいかがでしょうか。