Web メディアの運営に携わる方々にとって、自身が担当している Web メディア・コンテンツを検索結果の上位に表示させることこそが、最も重要で難しい作業といえます。
「新卒で Web メディア企業に入社され方」、「会社のプロダクトをプロモーションするためにオウンドメディアの運営責任者に任命された方」、「個人ブログで趣味について発信されている方」、Web メディアを運営する動機は様々ですが、皆一概に、自信が抱えるコンテンツを検索結果の上位に表示するために、「Google アナリティクス(GA)」や「Google サーチコンソール(GSC)」に代表されるようなツールを使って SEO 対策を実施していることでしょう。しかし、これらのツールから具体的にどのようなインサイトを引き出せるかは個人の技量次第であるといえます。そこで本記事では、BI ツールの「Tableau」を使って、Google アナリティクスと Google サーチコンソールのデータをビジュアライゼーションすることで、データドリブンにインサイトを導出し、SEO 対策に活かす方法をご紹介いたします。
本記事は、以下のような方々を対象としております。
- Tableau を使ったデータドリブンな Web マーケティングに興味がある方
- Web メディアの運営責任者
- データドリブンな SEO の初心者で、データを使った分析に強くなりたい方
- そもそも SEO の知見が少ない方
Tableau とは
ビッグデータ分析や AI の台頭に伴い、データを簡単に可視化できる様々な BI ツールが誕生しました。その中でも Tableau は、操作性の高さや連携できるデータソースの豊富さから、非常に人気の高い BI ツールです。また、Tableau は GA や GSC とも連携することができるため、データドリブンな SEO 対策をする上で、最適な BI ツールといえます。ここで注意が必要なのは、Tableau は GA とは直接連携することができますが、GSC とは直接連携することができないため少し工夫が必要です。GSC と Tableau の接続方法には多少のクセがあったので、具体的な接続方法については、また別の記事を用意するつもりです。
データビジュアライゼーション
ここからは、実際に作成したダッシュボードをお見せしながら、ダッシュボードの持つ機能とインサイトの導出方法について説明していきます。本記事では、弊社のメディア事業部が持つ生データを可視化しています。
GA のデータをビジュアライゼーション
GA のデータを実際にビジュアライゼーションして、日々の施策の成果を確認してみましょう。まず、ダッシュボードからインタラクティブに情報を得られるように、「タイトル」や「日付」などからビジュアライズ条件を細かく設定できるように、パラメータ ① 、② を用意しています。
- ① グラフで表示するデータを日付範囲でフィルタリングする
- ② タイトルやページのリンクでフィルタリング
パラメータ ② が設定されていない状態では、所定の日付範囲でのデータがビジュアライゼーションされています。パラメータ ①、② 以外にも、ダッシュボード内の「グラフ」を利用して、さらにそれぞれのグラフをフィルタリングすることができます。以下の例では、左のグラフの気になる「記事のタイトル」をクリックすることで、右の 2 つのグラフがその「タイトル」でフィルタリングされています。つまり、
- パラメータ ② で似たような KW を狙っている記事を絞り込む(ニシを記事)
- 左のグラフを確認して思ったよりも PV 数を稼げていない記事があればクリックすることで、右のグラフをフィルタリングする
- 直帰率や離脱率を確認して、SEO 施策の効果を確認する
といった流れで、GA にアクセスすることなく、インタラクティブに記事を分析することができます。
またこのダッシュボードでは、左のグラフで気になる数値を見つけたら、ページタイトルにマウスカーソルを合わせるだけ、ページごとの平均滞在時間の推移を確認することができます。ここでは、Tableau の「Viz In Tooltip」という機能を使っています。
このように、Tableau でインタラクティブに GA のデータを分析することができ、施策の効果を効率よく確認することができます。
GSC のデータをビジュアライゼーション
GSC のデータのビジュアライゼーションに関しては、こちらの記事と書籍「Tableau ビジュアル Web 分析」の新法 90 を参考にさせていただいております。
以下のダッシュボードでは、CTR とクエリごとの順位の相関を確認することができます。と、その前に。このままでは、表示回数が非常に少ない、「雑多なクエリ」まで表示されてしまっていますよね。そこで、パラメータ ② を用意することで、Web 担当者が自由にクエリの絞り込みを行えるように設定しました。
例えば上記のダッシュボードでは、パラメータ ② の最低表示回数を”10″ に設定していますが、これを “100” に変更してみます。すると、雑多なクエリが除去されて、次のようにだいぶすっきりしたグラフになります。
だいぶすっきりしたところで、いよいよ、このダッシュボードを用いたインサイトの導出方法について説明していきます。上のグラフは縦軸がクリック率(CTR)、横軸は加重平均順位となっています。つまり、グラフの上部にあり、加えてグラフの左部にあるクエリほど CTR と順位の両方が高い良記事と言えます。グラフの左上に多くのクエリが集まっている状態こそが理想です。それに対して、グラフの左下に多くのクエリが集めっている状態ではどうでしょうか。このようなクエリは、検索順位は高い割に CTR が低いことを表しているため、記事のタイトルやディスクリプションが魅力的ではないことを示唆しています。原因としては、リスティング広告と共食い状態にあることなどが考えられます。タイトルやディスクリプションの修正はコストパフォーマンスの高い施策なので、狙っているクエリがグラフの左下にある場合は、とりあえずタイトルとディスクリプションを修正すべきであることは一目瞭然です。グラフから、このようさインサイトが一目で導出できるのがビジュアライゼーションの強みです。
また、深掘りしたクエリをクッリクすることで、下のグラフをフィルタリングすることができます。
下のグラフの Page Links をクリックすることで、日付ごとの順位と CTR をモニタリングできるダッシュボードへ移動することができます。「日付ごとの変動を確認する」をクリックすると、次のようなダッシュボードに移動することができます。
こちらのダッシュボードでは、一つ前のダッシュボードで絞り込まれたクエリについて、CTR × 順位の相関を日付ごとに確認することができます。つまり、先ほどのダッシュボードから得られたインサイトをもとに、直近のタイトルやディスクリプションの修正が、検索順ににどういった影響を与えたのかを深掘りすることができます。つまり、次の施策の提案から施策の効果の確認までを 1 つのダッシュボードからインタラクティブに効率よく確認することができます。
また、右上にある戻るボタンから簡単に 1 つまえのダッシュボードに戻ることができます。
結び
ここまで、Tableau を用いたデータドリブンな SEO 対策の手法について説明してきました。この記事をここまで読んでくださったあなたなら、Tableau を用いてダッシュボード作成するだけで、「一目で次にやるべき施策がイメージできるようになる」ことをご理解いただけたかと思います。本記事では、具体的なパラメータの設定方法やダッシュボーを見やすくし、ディレイを減らすための工夫については詳しく説明できていません。しかし、Tableau を上手に使いこなすことで、 SEO に関する知見が薄い素人の方でも、ダッシュボードを共有しておくだけで簡単に次の SEO 施策を提案できるようになるでしょう。チーム内に Tableau に強いデータアナリストが 1 人でもいれば、Tableau を使ったデータドリブン SEO を実践することで、チーム全体でインサイトの導出が容易になることでしょう。
高専から東京農工大学工学部に編入学し、大学時代は、画像生成ディープラーニングモデルの一種である GANs や学習済みディープラーニングモデルを用いた教師なしクラスタリング手法の研究に従事。入社 2 ヶ月で Profesional Data Engineer を取得。最近は Kaggle のメダル獲得を目標にデータサイエンスについて勉強中。