トレインズ特集「AIの学び方」。今回はAI/機械学習に活用できるクラウドサービスについて、編集部が記事を執筆しました。
「せっかくAIや機械学習を勉強しているなら、実際に動かしてみたい!」
「勉強を始めたばかりだし、AIを動かす高いPCを買うのは大変だけど、クラウドサービスなら早く処理できるのかな?」
AIや機械学習の勉強をし始めた場合には、このように感じる方も多いのではないでしょうか。
学習の効率やモチベーションを高める為には、実際に動かしてみることが非常に重要です。その際、クラウドサービスを活用することは有益な選択肢の1つとなります。
それに加え、機械学習の構築にクラウドサービスを活用する企業が増えており、機械学習に関連するクラウドサービスを活用するスキル・経験が重宝されるようになってきました。
この記事ではクラウドサービスの解説や未経験者でも安価に使用できるサービス、また代表的なクラウドに関して解説していきます。
クラウドサービスのメリット
クラウドサービスとは、インターネットで接続されているコンピュータやデータベース、ストレージ、アプリケーションなどを使いたいときにすぐに使用できるサービスを指します。
例えば使用している人が多いクラウドサービスとしては、Googleのサービスが挙げられます。
- Gmail
- Googleドライブ
- Googleフォト
- Googleドキュメント
- Googleスプレッドシート
これらはすべてクラウドサービスで、クラウド上に情報が保存されている為Googleアカウントさえあれば複数の端末からインターネット経由でアクセスが可能です。
クラウドサービスを活用することには、さまざまなメリットがあります。
今回は特に個人で利用する際のメリットを紹介していきましょう。
- コストメリットが大きい
- すぐに利用できる
- 保守管理が不要
それぞれ具体的に確認していきます。
コストメリットが大きい
演算速度の速いコンピュータや、容量の大きいストレージ、便利なアプリケーションをすべて揃えようとするとかなり費用がかかり個人で揃えるのは簡単ではありません。
クラウドサービスであれば自分ですべて揃える必要が無いため、安価に利用が可能です。
また、必要なときに必要な分のクラウドサービスを活用できるため、不要なものにお金を無駄に払うことが減る為、コストを削減できます。
例えばMicrosoft Officeを活用する場合、買い切りのOfficeを購入する場合には¥38,284かかりますが、クラウドサービスであるMicrosoft 365を利用する場合には、1月毎に契約を更新でき、年額¥12,984で使用可能です。
PCを交換しなかったり3年程度同じ環境で使用し続ける場合には買い切りの方がお得ですが、常に最新のソフトを使用したり複数の端末を使用する場合には、Microsoft 365の方がお得といえます。
特にAIや機械学習の勉強を始めたばかりで、本格的に学んでいくか分からない状況でも気軽に導入できます。
コストを低く抑えられることで、他のサービスを利用したり学習するための参考書を準備したりと、費用を振り分けることが可能です。
すぐに利用できる
個人でアプリケーションやストレージを準備する場合には初期投資も大きいため、上手く使えなかったり他のサービスに切り替えたかった李しても、簡単に入れ替えの決断ができません。
一方でクラウドサービスはそのほとんどが月額制のサブスクリプションや、使用した分だけ支払う従量課金制なので、新しいサービスの導入や切り替えが簡単に出来ます。
また導入にかかる時間も利用契約をすれば数分から数十分程度で利用できるため、スピーディーに使用可能です。
保守管理が不要
個人でコンピュータやストレージを導入したり、アプリケーションを購入する場合、保守やメンテナンス、アプリの更新が必要になります。
使用するのは簡単だったとしても、保守管理には専門的な知識が必要な場合もあり時間がかかります。
一方でクラウドサービスであれば、サービスを提供している会社が保守管理を行ってくれますので、個人で対応する必要がありません。
慣れていないことを学び、対応する必要がないのでその分の時間を新たな知識習得やスキルアップに充てられます。
クラウドサービスの種類と特徴
クラウドサービスは提供しているサービスの内容を元に、大まかに次の3つに分類可能です。
- SaaS
- PaaS
- IaaS
それぞれどのようなサービスなのか、その特徴を確認しておきましょう。
これらの違いを理解しておくことで、最終的にアプリケーションを使用するまでに必要な機能のどこまでをクラウドサービスで確保できるのかを理解でき、自分にとって必要なクラウドサービスを選択できます。
Saasとは?
SaaSはSoftware as a Serviceの略称で、その名の通りソフトウェア機能をクラウドサービスとして提供しています。
クラウドサービスの中でももっとも多くの種類が提供されているのがSaasです。
良く用いられているサービスとしては、Googleが提供しているGmailや、Microsoftが提供しているOffice365などが挙げられます。
PCにソフトをインストールする必要が無いため手間が省けますし、仮にPCを入れ替えたとしてもアカウントさえ持っていれば入れ替えた先のPCでもすぐにサービスを利用できます。
PaaSとは?
PaaSはPlatform as a Serviceの略称で、アプリケーションサーバやデータベースなどの、プラットフォーム機能の提供を行うサービスです。
Paasとして代表的なものはAmazonが提供しているAmazon Web Services(AWS)や、Googleが提供しているGoogle Cloud Platform(GCP)などが挙げられます。
これらについては、後程機械学習を利用できるサービスの項で少し深堀して紹介します。
IaaSとは?
IaasはInfrastructure as a Serviseの略称で、パソコン本体のようなストレージやサーバーといった機能を利用できるサービスです。
他のサービスに比べると使用する際に知識が必要ですが、保守管理は提供元が行ってくれるため手間がかかりません。
IaaSとして代表的なものはPaaSでも紹介したAWSやGCPが挙げられます。また、国産ではさくらクラウドというサービスもあります。
機械学習にクラウドを活用するメリットは?
機械学習には、様々なサービスや複雑な計算を迅速に処理してくれるコンピュータが必要です。
また、大量にデータを処理する必要もあるので場合によっては大きな保存領域が必要になります。
これらを自分で揃えるのは簡単ではありませんが、クラウドサービスを活用することで簡単に導入可能です。
また、各社のクラウドはそれぞれ機械学習に必要なアルゴリズムが用意されています。
そのため、場合によっては、機械学習やプログラミングの知識が無くても機械学習できるのが大きなメリットです。
機械学習に使える代表的なクラウド比較3選
機械学習に活用できるクラウドは複数ありますが、今回はその中でも有名な企業が提供しているクラウドを3種類紹介していきます。
クラウド | AWS | Azure | GCP |
機械学習 | 必要 | 必要 | 不要 |
プログラミング | 必要 | 不要 | 不要 |
どんな時におすすめ? | 無料で色々なことを試してみたい! | プログラミングの勉強はまだこれから! | とりあえず機械学習を使ってみたい! |
それぞれのサービスがどのような特徴を持っているか確認していきましょう。
AWS
AWSはネットショッピングを活用する人の多いAmazonが提供しているサービスです。
AWSからは機械学習の実行や、文章を音声に変換、画像分析と動画分析などさまざまなサービスが提供されており、多くを無料で使用可能です。
一方で、機械学習のプログラムは提供されておらず自分で作成する必要があるため、初心者が最初に活用するには難易度が高いかもしれません。
Azure
AzureはMicroSoftから提供されているサービスです。
AWSやGCPは機械学習の種類別にメニューが分かれていますが、Azureの場合には種類別のメニューがないため、自分で学習のアルゴリズムを決めて実行しなければいけません。
機械学習の学習を進めているけど、自分でプログラムを書くところまでに至っていない人にとっては、知識不要で実行できるのでおすすめのサービスといえます。
GCP
Googleが提供しているクラウドサービスがGCPです。
Googleのサービスでは画像検索やGoogle翻訳に機械学習が用いられていますが、同じようなことをGCPを活用すれば実現できるようになります。
しかし、機械学習と実行されているプログラムは完全にブラックボックスになっているため、細かな設定などはできないため学習をさせる為に必要な画像の枚数などに制約があるのが難点です。
中身は分からなくても良いので結果が必要な場合には良いですが、細かな調整をしたりアルゴリズムを学ぶのには向いていません。
クラウドサービスの料金比較表
今回紹介した3種類のクラウドサービスを利用する際の料金を確認していきます。
AWS | Azure | GCP | |
無料クレジット | なし | ¥20,500(30日間) | $300(12か月間) |
無料サービス期間 | 12か月 | 12か月 | 無制限 |
無料サービス種類 | EC2 S3 RDS EFS |
Virtual Machines Blob Storege SQL Database Cosmos DB |
Compute Engine Cloud Strage BigQuery App Engine |
無料利用枠利用後 | 超過分請求 | サービス停止 | サービス停止 |
無料クレジットは本来有料なサービスを無料クレジットの範囲内で使用可能です。
また無料サービス名に記載されているサービスであれば、無料サービス期間は費用を必要とせずに使用できるので、まずはこの範囲でできることを試してみましょう。
もし無料利用枠を超えてしまった場合にAWSはそのまま課金されてしまいますので、間違っても費用を掛けたくない場合には、AzureやGCPを利用しましょう。
いずれのサービスも本格的に有料部分の機能を活用しようとすると料金体系は分かりにくく、想定以上に高額になってしまうこともあるため注意が必要です。
クラウドAIとエッジAIの比較
ここまで機械学習やAIを活用できるクラウドについて解説してきましたが、最近ではエッジAIと呼ばれる活用方法が注目されています。
ここではエッジAIについて解説し、クラウドAIとエッジAIのどちらがおすすめなのかを確認していきます。
エッジAIとは?
クラウドAIはインターネット上にあるサービスを活用したAIです。
一方でエッジAIは現場に近いデバイスにAIの学習モデルを活用することです。現場に近いデバイスのことをエッジデバイスと呼ぶため、エッジAIと呼ばれています。
クラウドAIに比べるとその名の通り現場で積極的に使われるようになっており、クラウドとの通信が不要な分タイムリーな判断や学習結果の反映が可能です。
クラウドAIとエッジAIはどちらがおすすめ?
未経験者がAIを学んで活用していく際には、クラウドAIとエッジAIのどちらがおすすめでしょうか?
結論としては、クラウドAIの方がおすすめです。
エッジAIは特に製造業の生産現場のように、外部との通信を必要とせずに現場で集まるデータを元に機械学習の精度を高めたり、通信ができない状態でも改善したりする必要がある場合に向いています。
未経験者が機械学習やAIを学んでいく際には、生産現場でエッジAIの特徴を生かせるようなシチュエーションはほとんどないでしょう。
エッジAIの利点を十分に活かせないならば、比較的コストを抑えながらタイムリーにさまざまなサービスを活用できるクラウドAIの方がおすすめです。
AI/機械学習にはクラウド活用がおすすめ
この記事ではクラウドそのものの概要や、AI/機械学習へ活用できるクラウドサービスの特徴について紹介してきました。
まだ勉強を始めたばかりで本格的に継続するか分からない状況で、初期費用をそれほどかけずにさまざまなサービスを活用するには、クラウドサービスがおすすめです。
企業への就職・転職を目指す場合にも、機械学習導入時にクラウドサービスを活用する企業が増えているため、企業からもそのスキル・経験が重宝されています。
AI/機械学習を学ぶ場合には、PaaSやIaaSに分類されるAmazonやMicrosoftが提供してくれているクラウドサービスを活用すると良いでしょう。
いずれのサービスも無料で使用出来る範囲がありますので、まずは無料分を活用しながらスキルアップしていけると良いですね。
また、AIについて学んでいるとエッジAIの人気が高まっていることが分かりますが、エッジAIは生産現場などで使われることが多いため、クラウドサービスを活用してAIを学んでいきましょう。
企画・執筆:トレインズ編集部 / 編集:廣内眞文(エスタイル)